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自転車とバイクで試してみた! 通勤に使用するメリットとは?

国土交通省・自転車活用推進本部は、今年4月から自転車通勤を奨励する施策を展開している。「自転車通勤導入に関する手引き」といった参考書も発行され、自転車通勤による環境負荷の低減、経済性、心身の健康増進、災害時に役立つ点など利点がアピールされている。バイクにも同様の効果が期待できるため、ここではバイク通勤のメリットについて考察・検証してみた。

会社への通勤手段は、電車やバスなどの公共交通機関をはじめ、クルマ、バイク、自転車などのパーソナルな乗り物も使われている。普段は電車通勤で、天気のいい日にはバイクや自転車で通うというのも気分が変わっていいものだ。

近年、「働き方改革」といった背景もあるなかで、政府は企業に呼びかけて、自転車通勤を推進する取り組みを始めた。自転車は環境にやさしく、災害時に役立ち、交通渋滞を緩和し、国民の健康増進につながるといった理由によるものだ。

その趣旨ならば、バイクももっと通勤に活用できる可能性がありそうだ。政府が後押しする自転車通勤のメリットに照らしながら、ここではバイク通勤のメリットについても考えてみたい。

※東京都市圏の通勤(自宅 – 勤務)トリップにおいて、自転車 の分担率は約 10%、バイクの分担率は約 2%となっている。 ちなみに沖縄県那覇市では、全トリップのうち、自転車の 分担率は約 2%、バイクの分担率は約 8%と多い。那覇市内 では、バイク通勤が比較的盛んに行われている(MotorCycleInformation 2020 年 4 月号・特集より)。

国や自治体が自転車通勤を推進

国土交通省・自転車活用推進本部は、2020年4月3日、「『自転車通勤推進企業』宣言プロジェクト」をスタートさせた。自転車通勤を積極的に奨励している企業・団体を認定することで、自転車通勤の普及拡大を図っていくという。認定の要件は、①従業員用の駐輪場を確保すること、②交通安全教育を実施すること、③自転車損害賠償責任保険等への加入を義務化することの3つ。認定されると、「宣言企業ロゴマーク」の使用が認められ、ホームページや名刺にロゴを表示するなどして、会社のPRに活用できる。また、宣言企業のなかから、自転車通勤者の多さや独自の取り組みなどにより「優良企業」の認定も行う。7月中に初回の「宣言企業」が認定され、今年度内には「優良企業」も選出される見通しだ。

このプロジェクトは、2016年に制定された『自転車活用推進法』の施策として行われている。同年、自転車活用推進本部が設置され、翌17年6月には「自転車活用推進計画」が立案されている。これにより、「自転車月間」(毎年5月)、「自転車の日」(毎年5月5日)における活動や、自転車専用道路および駐輪場の整備促進、シェアサイクル施設の拡大、安全普及、災害時活用、観光促進など、自転車を活用するための総合的な取り組みを行うことになっている。

また、地方自治体にも自転車通勤を推進するところが出てきている。愛媛県の「自転車ツーキニスト推進事業所登録制度」、栃木県宇都宮市の出前講座「自転車通勤のススメ」、警視庁の「自転車安全利用モデル企業制度」などが実施されており、今後、同じような趣旨の施策が増えそうだ。

自転車通勤制度導入の手引きを作成・配布

自転車通勤導入に関する手引き

ここで注目したいのは、自転車活用推進本部の政策連携機関である自転車活用推進官民連携協議会が2019年5月に発行した『自転車通勤導入に関する手引き』(A4版・50頁)という冊子だ。

内容は、自転車通勤のメリットを紹介したうえで、会社が自転車通勤制度を導入するに当たって検討すべき事柄を解説したもの。自転車通勤の対象者、対象自転車、通勤経路と距離、目的外使用、通勤手当て、安全とマナー、事故時の対応、保険への加入、駐輪場等の設備についてなど、社内制度のルール作りについて述べている。この手引きに示された基本的な考えは、バイク通勤制度を導入する場合にも参考にできるものとなっており、新しい時代に対応した通勤制度について考え、見直しをする際の貴重な資料といえる。

自転車通勤のメリットをバイクに当てはめてみる

『自転車通勤導入に関する手引き』では、会社が自転車通勤を導入することによって得られる事業者のメリットと、従業員のメリットとを整理して紹介している。
事業者のメリットとしては、電車通勤や自動車通勤から自転車に転換することで生じる「費用の削減」を第一に挙げている。次に、自転車に乗って気分よく通勤することで心身ともに健康維持・増進がなされ、仕事の「生産性の向上」が期待できるとしている。さらに、環境にやさしい健康的な企業としての「イメージアップ」を図ることができ、「雇用の拡大」にもつながるとアピールしている。

自転車通勤を奨励することによる事業者のメリット

これらのメリットについて、自転車をバイクに置き換えて考えてみる。まず、「経費の削減」については、場合によってはバイク通勤の効果も期待できる。自動車通勤が主流となっている企業ならば、通勤手当や駐車場費用の削減が検討できそうだ。
「生産性の向上」については、バイクも自転車と同様に期待できる。バイクは、人と車両が一体となって運転することが楽しい乗り物であり、走行すること自体が気分のよさにつながる。混雑した電車やバスのストレスから解放されるうえに、バイクを運転することで気持ちの切り替えになり、仕事に向き合う集中力の向上が期待できる。事業者にとってバイク通勤を導入するメリットは、ここがいちばん大きいものとなりそうだ。
続いて従業員のメリットについてみると、「通勤時間の短縮」が挙げられ、500mから5km弱の距離ならば、自転車の所用時間はほかの交通機関よりも短いと述べている。

自転車通勤による従業員のメリット

また、「身体面の健康増進」、「精神面の健康増進」もメリットとして挙がっている。
「通勤時間の短縮」に関しては、バイクにも優れた効果が期待できる。この点については、一般社団法人日本自動車工業会(自工会)が過去に実測調査を行っており、東京都内の渋滞した道路(三原橋交差点―上野駅前交差点:3.4㎞)と、渋滞していない道路(等々力不動前交差点―武蔵新田駅前交差点:5.8㎞)について、交通機関別に移動にかかる時間(旅行速度)を実測しており、バイク(とくに原付二種)が最も迅速な乗り物という結果になった。このことから、バイク通勤はほかの通勤手段よりも時間を節約できると考えられ、通勤距離によっては自転車以上の効果が期待できる。

交通機関別旅行速度(東京都内)

次に「身体面の健康増進」に関しては、バイクの運転が通勤シーンで“適度な運動”になるとは考えづらい。むしろ肉体的な運動量が小さいことで、疲労が少なく汗をかかずに済むことなど、バイクならではの大きなメリットと捉えることもできる。
最後の「精神面の健康増進」に関しては先に述べた通りで、とくにバイク好きな人ならば、仕事の行き帰りにバイクに乗ることで高揚感を得られたり、気分をリフレッシュできるため、精神面の健康にはよい影響をもたらすものと考えられそうだ。

自転車・バイクで“模擬通勤”を実施

ここまでの考察を実地に検証するため、東京都内で仮の通勤区間を設定し、被験者に電車、自転車、バイクそれぞれで移動してもらい、走行距離と所用時間を計測したほか、交通手段ごとのメリットとデメリットについて感想をインタビューした。

自転車による模擬通勤

被験者は東京都豊島区の27歳男性。400㏄の普通二輪車を所有しており、実験に使用してもらった。自転車はシェアリングサイクル(24インチ)を利用した。このシェアリングサイクルの駐輪場(豊島区池袋3-3-10)を起点に、東京都庁第一庁舎(新宿区西新宿2-8-1)を終点として、平日朝8時過ぎに模擬通勤を実施した。電車は東京メトロ副都心線「要町」駅から都営大江戸線「都庁前」駅までを利用。自転車とバイクはネットのルート検索を使って、それぞれのモードでの最適ルートを通行した。どの交通手段も、徒歩で移動した区間も含めて所用時間を計測。もちろんバイク・自転車は、遵法走行に徹し、けっして急がず安全に配慮してもらった。

バイクによる模擬通勤

結果は下表の通り。所用時間がいちばん短かったのはバイクの29分、電車は30分、自転車は33分だった。バイク・自転車は、道路の混雑状況や赤信号の数に影響を受け、電車は乗り継ぎのタイミングでタイムロスもある。1回だけの実験ではあくまで参考にしかならないが、現実的にはこうなるという結果の一つである。

“模擬通勤”における起点から終点までの移動結果(2020 年7 月・平日3 日間で実施)

被験者は、次のように感想を述べた。

【電車通勤の感想】
 電車通勤は乗り換えに7分かかりましたが、乗車時間自体は短くて、わりと早く着いた印象です。電車に乗ること自体は日常的なことですし、移動中は仕事のことをぼーっと考えたりして、特別に何か意識したことはありません。ただ、混雑した電車内ではウイルス感染への心配から、かなりストレスを感じます。会社が自転車通勤かバイク通勤を認めてくれるなら、なるべく電車通勤をやめて、どちらか自分に都合のいいほうを選択すると思います。

【自転車通勤の感想】
「自転車通勤のメリットは、移動の費用がかからないということに尽きると思います。都庁周辺の駐輪場も1日100円程度ですから毎日でも負担になりません。6km近く走ってかなりの運動になったので、体力づくりしたい人にはおススメです。でも私の場合は、坂が辛くて3kmまでが限界かなと思いました。汗だくになったので、着替えが必須です。それから、普段はあまり意識しませんでしたが、スマホに示されたルートが自転車で走っていい道なのかそうでないのか判然としない区間があって、違法走行していないか不安でした。歩道での走行も、人や自転車の飛び出しが気になって、サイクリング気分というわけにはいかないと思います」

【バイク通勤の感想】
「ストレスなく楽に移動できたという点では、バイクがいちばんです。交通ルールも明確なので安全運転に集中できて、ぼーっと仕事のことを考えたりすることもなく、バイクモードと仕事モードの気分の切り替えになります。この点は私にとって、大きなメリットだと感じました。ただしバイクのルートには交通渋滞もあって、爽快感までは得られなかったですね。赤信号の多さも気になりました。ちなみにこの日は雨予報だったので、レインウエアを着て出たのですが、にわか雨にも困りませんでした。自転車ではさすがに雨だと出かけたくないですね。会社に駐車できるスペースがあればいいのですが、自分で確保するとなると費用がかかります。そのあたりが気になったところです」

バイク通勤のメリットとデメリット、引き続き検証していく必要がありそうだ。

●問い合わせ先

国土交通省 自転車活用推進本部事務局
TEL:03-5253-8111
URL:www.mlit.go.jp/

一般社団法人日本自動車工業会(広報室)
TEL:03-5405-6179
URL:www.jama.or.jp/

2020年上半期(1~6月)の二輪車市場 軽二輪の好調で例年並みの実績維持

2020年上半期(1~6月)の国内二輪車販売台数*注は、新型コロナウイルス感染症による社会経済への影響が懸念されるなか、原付二種以上については例年並みの水準を維持しており、とくに軽二輪(125㏄超~250㏄以下)は、グラフの10年内でみて最も高い実績となっており、上半期の国内二輪車市場を下支えした。

原付二種以上(自動二輪車)の販売台数推移
※原付一種は出荷台数(日本自動車工業会データ)

一方、原付一種(50㏄以下)に関しては、長期の減少傾向が引き続いている状況だ。

原付一種の販売台数推移
※原付一種は出荷台数(日本自動車工業会データ)

原付二種以上の販売台数を月別にみると、1~3月は前年をやや上回る実績だったが、緊急事態宣言後の4~5月は、前年実績の8割程度に減少。6月の販売で取り戻したかっこうだ。

原付二種以上の1年間(1~12月)の販売台数は、近年22万台前後で堅調な推移を見せている。今年下半期でのさらなる巻き返しに期待がかかりそうだ。

問い合わせ先

一般社団法人日本自動車工業会
TEL:03-5405-6179
URL:www.jama.or.jp/

一般社団法人全国軽自動車協会連合会
TEL:03-5472-7861
URL:www.zenkeijikyo.or.jp/

町の活性化に大きく貢献!  スズキ・隼の「隼駅まつり」

スズキの大型スポーツバイク「隼」のユーザーは、同名の「隼駅」(鳥取県八頭町・若桜鉄道)を訪ねるツーリングを“聖地巡礼”になぞらえて楽しんでいる。毎年8月に開かれる「隼駅まつり」は、全国から集まる隼・ライダーと地元の住民が一緒になって盛り上げる夏祭りだ。これが町の活性化につながり、メディアや起業家が注目。学術的にも関心が持たれている。

年に一度、町の小さな無人駅を目指して、全国から2,000台以上のバイクがやってくる。この駅は、鳥取県八頭町にある若桜鉄道隼駅。集まるのは、スズキの大型スポーツ「隼」(排気量1,340㏄)だ。“名前つながり”のこのバイクミーティングは、「隼駅まつり」として町に定着し、地域社会にさまざまな活力を生み出している。最近では、まつりの発生とメカニズムについて、学術的な関心も呼んでいる。

聖地「隼駅」に詣でる隼のライダーたち

“聖地”を目指して全国の隼乗りが大集合!

隼駅まつりは、隼のユーザーが、隼駅を“聖地”と見立てて、ツーリングの目的地として全国から集まるもので、それを町が大歓迎するというイベント。毎年8月に行われ、主催は「隼駅を守る会」など地元の住民による実行委員会が務めている。
昨年8月4日に開かれたまつりは、すでに11回目を数え、過去最高の約2,300台のバイクが町に集結。まつり会場の船岡竹林公園は、イベントを楽しむライダーと地元の人たちで大いに賑わった。

隼駅まつりへのバイク参加台数の推移

北海道から沖縄まで全国各地からやってきた隼ライダーは、何はさておき隼駅に愛車をとめて記念写真を撮るのが“お約束”。暑いさなか、地元の郵便局が駅で無料サービスするかき氷と冷えたおしぼりに、ライダーは大感激していた。

駐車場に並ぶ隼の光景はまさに壮観

イベント会場の駐車場には隼がびっしり並び、隼ファンにとっては、1台1台見て飽きないものだ。同好のユーザー同士、初めて会った人とも会話が弾むし、過去に出会った“友人”との再会を楽しみに何度も参加するライダーが少なくない。アトラクションとしては、太鼓と舞などの郷土芸能、地元学生の書道パフォーマンスやダンス、婦人会による盆踊りが披露されるなど、住民が積極的にステージを盛り上げている。バイクイベントでありながら、“町の夏祭り”といった色彩が強い。来場者数は年々増加しており、単一モデルのバイクミーティングとしては国内最大級のイベントだ。

地元の演舞チームが傘鳴子踊りを披露

ブランド・コミュニティとしての研究対象

商学の学術書である『現代流通変容の諸相』(中央大学出版部・2019年9月刊)には、「地域主導型ブランド・コミュニティ ―スズキ・ハヤブサと鳥取県八頭町『隼駅まつり』の展開―」という論文が掲載されている。
筆頭執筆者は、鳥取大学地域学部で講師を務める白石秀壽さん。マーケティング論の立場から、ブランドとしてのハヤブサに注目し、ブランドを通じて形成される隼駅まつりを一つのコミュニテイと捉えている。このまつりが10年以上も継続され、町に与えてきた影響について調査・研究を行っている。

白石さんは次のように説明する。「企業や製品のブランドが、学術的に注目されるようになったのは1980年代です。2000年代になるとアメリカの学者が“ブランド・コミュニティ”という概念を提唱し、以来、それに関する研究が盛んに行われています。ブランドへの強い愛着を持ったユーザー同士がつながりを持ち、コミュニティが創発されることで、企業やマーケットにどんな影響をおよぼすか、学術的にも実務的にも関心の高いテーマなのです。とくにバイクやクルマといった消費財はブランド・コミュニティを形成しやすく、多くの研究事例があります」と話す。

隼への愛着が強い仲間意識をつくる

そうしたブランド・コミュニティは、メーカーが主導するケースと、ユーザーが主導するケースに大別される。たとえば、バイクメーカーが顧客サービスとして実施するようなオーナーズイベントなどは、メーカー主導型のコミュニティ。一方、同一モデルのユーザーが自発的に集会を楽しむようなケースは、ユーザー主導型のコミュニティといえる。
白石さんは、「隼駅まつりの場合、スズキ・隼という明確な製品ブランドを核にしながら、そのコミュニティを主導しているのはバイクメーカーではなく、ユーザー団体というわけでもありません。八頭町の住民が率先してまつりを主催し、運営している点が非常にユニークなのです。私はこの形態を“地域主導型ブランド・コミュニティ”と呼んでいますが、学術的にはほかに報告が見当たらない貴重なケースです」と話す。

地域主導のブランド・コミュニティ
地元の子供たちも積極的に参加している

この点について、株式会社スズキ二輪 広報宣伝部の村上 茂さんは、「隼駅まつりは、私たちにとっても全国の隼オーナーの皆さんにお会いできるたいへん重要なイベントとして、毎年さまざまな面で関わってきました。しかしその関わり方は、運営に参画するというような形ではなく、あくまでも隼駅地区の町のイベントに協力するという形で関わっています」と、説明している。

隼駅まつりは“駅を守るため”の思いから

地域主導の隼駅まつりは、どのようにして始まったのか。まつりを立ち上げた「隼駅を守る会」の西村昭二さん(75歳)は、2007~08年当時を振り返る。「はじめは、なんで隼駅にだけバイクがよく来るんだろうと、不思議に思っていました。ちょうど、地域の過疎化が進んで若桜鉄道の廃止が囁かれていたころです」。すると2008年8月に、ある二輪専門誌が「隼駅に隼で集まろう!」という記事を書き、それが西村さんにも伝わった。隼駅にバイクがやってくるナゾが解け、「こんな無人駅でもたくさん人が来てくれるならいい話です。なんとか駅を賑わせたい。地元の約200世帯に声をかけて、2009年3月に隼駅を守る会を立ち上げました。駅を目指してやってくるライダーに、何かおもてなしをしたいという意見がまとまって、それが隼駅まつりという形になっていったのです」と話す。

守る会では駅をきれいに整備して、スズキに協力を求めて隼の特大ポスターを駅舎に掲出するなど、ライダーの受け入れ体制を整えた。2009年8月、第1回の隼駅まつりを開催。やってきたライダーに、冷やしたスイカを切ってふるまう農家の人たちもいた。町の歓迎に心を打たれたライダーは再訪を誓い、まつりは年々充実していった。
西村さんは、「私はライダーのおかげで、この駅を守ることができたと思っています。それだけでなく、町の者にもやる気が出て、町が元気になったと思います」と話している。
守る会には、新しい力も加わった。現在、事務局長を務めるのは山村俊太さん(36歳)。隼をこよなく愛するライダーだ。もともと奈良県の出身で、たまたま鳥取に隼という駅名があることを知って、愛車で駅を訪れたのが2007年のこと。「最初は気まぐれで来てみただけでしたが、何度かツーリングしに来るうちに、この町と人が好きになって、隼駅まつりの運営も手伝うようになったんです。6年前、ここに移住を決めました」という山村さん。「隼を通じてつながる人との出会いは本当に魅力的です。この町の素晴らしさをいろいろな人に伝えながら、隼駅まつりを支えていけたら嬉しいですね」と話している。

隼駅まつりは町に活気を生んでいる

隼駅まつりは、町の地域振興策にも好影響を与えている。八頭町役場で、隼駅まつり実行委員会事務局を務める保木本幸雄さんは、「観光資源の少ない八頭町ですが、隼のライダーがたくさん来る町として全国に知られるようになって、大きな宣伝効果があります。このまつりの勢いと、地方創生の機運の高まりで、町は活性化しています。たとえば廃校を再生した『隼Lab.』は、市民の憩いの場であり、IT関係者やイノベーターが集うワークスペースです。これもメディアや起業家からたいへん注目されています。まつりの実績が土台となって、こうしたチャレンジが成功しているのだと思います」と話す。

以前は何もなかった隼駅のすぐ前には、地元の若者や観光客に人気のカフェレストラン「HOME 8823」ができた。少し離れた場所には古民家を改造して、気軽に宿泊できるドミトリー「BASE 8823」がオープン。ここはライダー“ご用達”の宿泊施設となっている。
これらのレストランと宿は、いったん東京に出てUターンしてきた地元の若手が3人で共同経営している。会社の名は「トリクミ」といって、仕事を通じて自分たちの町を活性化したいという思いを込めている。代表の古田琢也さん(34歳)は、「年に一度、大勢のライダーが訪れてくれることで、町にすごく活気が出ます。まつりのときだけでなく、町を好きになってリピートしてくださる方も多いので、レストランも宿もやりがいを感じています」と話す。

「BASE 8823」を担当している山田 景さん(33歳)は、「宿泊するライダーのために、バイクの駐車場をライトアップして、中庭でバーベキューをしながら眺められるように工夫しています。洗車スペースを用意したり、工具を貸し出したり、ライダーにとって居心地がよく、便利に感じてもらえるサービスを心がけています。隼駅まつりの日が近づくとだんだんソワソワしてきて、頑張るぞという気持ちになりますね」とのことだ。

隼を使ったPRが大きな話題を呼んでいる

ラッピング列車に併走する隼

ほかにも隼は、町のPRに活用され、そのつど大きな話題を呼んでいる。
一つは若桜鉄道で運行されている隼のラッピング車両。初代車両が2016年に登場し、2019年からはデザインを新たに、2代目のラッピング車両が走っている。その出発式の様子は、大阪モーターサイクルショーのスズキブースで映像が生中継されるなど、多くの注目を浴びた。

一時は廃線が心配された若桜鉄道も、1日10往復だった運行本数が、今年春から15往復へと増便。地元住民の足としてだけでなく、ノスタルジックな観光列車も運行して、鉄道の旅を広くPRしていく計画だ(現在は新型コロナウイルスの影響により自粛中)。

隼のフレーム切手

また、地元の郵便局が企画して、隼駅まつりに発行時期を合わせ、隼をあしらったフレーム切手も発売された。2014年に初めて発行し、1,300シートが即完売するほどの人気だった。八頭町の船岡郵便局長・笠田昭四郎さんは、「切手のデザインはスズキのデザイナーに協力いただいて、価格は隼の排気量にかけて1,340円とするなど、こだわってつくりました。単一のバイクが切手になったのは初めてだと思います。町のPRにも貢献できたと思います」と話す。

八頭町観光協会事務局長・安住真彦さんは、「隼駅まつりをPRするうちに、私も影響されて隼ライダーになってしまいました。バイクで来るのが楽しい町として八頭町の魅力をもっとPRしていきたいですね。隼にあやかって、地元の梨を使った清涼飲料『ハヤブサイダー』を商品化しました。超強力な炭酸で、すんごい刺激です!」と、おどけてみせた。

隼駅まつりはなぜ成功しているか?

有志のライダーが安全とマナーを呼びかけ

さて、ここまで隼駅まつりの成り立ちと、その開催が町に与えてきた影響についてさまざまな話を集めた。町のPRや地域の活性化に役立っているとはいえ、バイクにさほど関心のなかった町の人たちが、10年以上に渡ってライダーを受け入れ続けている要因とは何か。    鳥取大学の白石さんは、一つの結論を述べている。「それは、隼に乗って町にやってくるライダーのモラルが、きわめて高いということです。地元の人たちを気遣って、乱暴な運転をしたり夜遅くまで騒いだりといったことをけっしてしません。多くの人がライダーのマナーのよさを指摘しています。これもブランド・コミュニティの効果の一つで、隼の名を汚すようなことはできないという、ライダーの矜持(プライド)がそうさせているのだと思います」と話す。  
実行委員会のメンバーには地元の関係者のほかにも、県外を含めた有志のライダーで構成する「隼駅を守る会・交通安全部」がある。地元の警察と連携して、まつりの前日から、訪れるライダーに安全運転を呼びかけ、駐車の誘導案内、交通整理を行うなど、イベントを陰で支えている。そうした活動があることも、町がライダーを受け入れ、まつりを継続していく大きな力になっているようだ。

人とバイクで描いた「隼」の絵文字。
2021 年8 月の開催実現を大いに期待したい!

今年は新型コロナウイルスの影響で、残念ながら開催を断念したが、実行委員会は、「今年の分も含めて来年は盛大に開催したい」と表明している。晴れて2021年8月の開催を楽しみに待ちたい。

●問い合わせ先
隼駅まつり実行委員会事務局(八頭町役場企画課)
TEL:0858-76-0212
URL:www.kirinnomachi.jp/hayabusa/

株式会社スズキ二輪 広報宣伝部
TEL:053-449-8016
URL:www1.suzuki.co.jp/motor/

異色のラノベが大好評ヒット! 「スーパーカブ」と女子高生の物語

小説『スーパーカブ』が多くの人に読まれ、好評を得ている。主人公は、山梨の高校に通う平凡な女子生徒。通学用に手に入れたスーパーカブを通じて、新しい出来事を経験し、人と出会い、成長していく青春物語だ。作品を読んだホンダの広報担当者は、「バイクに初めて乗ったときの“楽しさとハラハラ感”を思い出させてくれた。主人公を応援したくなる作品」と、話している。

女子高生とバイクを描いた『スーパーカブ』(角川スニーカー文庫/1~6巻・続刊)というライトノベルが、面白いと評判だ。2017年5月に第1巻が発行されると、反響が大きかったことからコミック版も出版され、現在、TVアニメ化に向けて製作が進んでいる。どこまで大きなヒットになるか楽しみな作品だ。
主人公は、山梨県北杜市の公立高校に通う女子生徒で、名前は「小熊」。両親がおらず、頼れる親戚もなく、友達もいない。趣味もなければ、将来の夢もない、内向的な女の子だ。そんな小熊が、通学のために手に入れたのが、ホンダのスーパーカブ。何もなかった小熊に、バイクのある生活が始まった――。今回は、この作品の魅力にフォーカスを当ててみたい。

小説『スーパーカブ』(第1巻)

ライトノベルのなかでも異色の作品

かつて中高生向けに企画されたライトノベル。いつしか“ラノベ”と略して呼ばれるようになり、学園コメディ、ラブコメディ、SF、異世界ファンタジーなどの人気ジャンルを確立。登場人物はアニメチックなイラストによってビジュアル化されている。これがいまの一般的なラノベのスタイルで、レーベル(発行元)ごとにマニアな大人のファンも大勢いる。大ヒット作品ともなれば、世界中で何百万部と読まれるという。
『スーパーカブ』の編集を担当している兄部萌柚子さんは、次のように話す。「スニーカー文庫の作品のほとんどが男性の視点で書かれているなかで、主人公を女子高生にして、バイクとの出合いを描いていくという着想がユニークです。普通の日常が淡々と展開されるところや、登場人物のビジュアルにしても、ごく平凡な女の子に描かれているところなど、ラノベのなかではかなり異色な作品になっています。そもそも“スーパーカブ”という固有の製品名がタイトルになっているのは、当社では前例のないことです。もちろんこのタイトルでないと作品が成り立たないし、読者を引きつける大きな力にもなっていると思います」
書店のなかには、ライトノベルの書棚だけでなく、二輪専門誌のコーナーにもこの書籍を置くところがあり、バイク好きの人たちにも、ファンが増えているという。

コミック『スーパーカブ』(第1巻)

バイクに乗ることで成長していく女子高生

小説の冒頭で、奨学金制度を使ってかろうじて高校に在籍できている小熊が、さほどの蓄えもないのにバイクを手に入れるシーンは印象的だ。
学校までの道のりは山坂のため、自転車通学の小熊には原付の生徒が少しうらやましい。バイク販売店に立ち寄って商品を眺めるが、値札に驚いてため息をつく。その様子を見ていた老店主が店の奥から出してきたのは、埃まみれのスーパーカブだった。戸惑う小熊だが、なんと店主が提示した値段は、“1万円”。それならばとシートに跨ってみると、小熊の頬にフワッと初夏の風が吹き抜けた。トキメキを感じて「これ、買います」と、言葉が口をついて出た――というものだ。
と、納得できる展開だ。しかも「キャンペーン中だから」と、新品のヘルメットとグローブが小熊にプレゼントされるくだりでは、店主の心意気に拍手を送った読者も多かったに違いない。
このように、女子高生が衝動的にバイクを購入し、追って原付免許を取得、初めて公道を走り、徐々に運転に慣れ、学校にバイクで通うようになる。その流れのなかで、小熊にとって初めての出来事が次々と巻き起こり、それを経験していく。同じくカブに乗る仲間ができたのも大きい。バイクのある生活を通じて小熊は成長し、自立していくという青春物語だ。

バイクを手に入れた小熊

兄部さんは、「私自身はバイクに乗りませんが、いち読者として、この作品を通して知らないバイクの世界を面白く垣間見ることができ、いろいろな“気づき”を楽しんでいます。バイクに乗る読者にとっては、バイクにまつわるいろいろな話にリアリティがあって、たとえば、ガス欠しそうになったときの小熊の不安感や、オイル交換やパンク修理を自分でやろうとするシーンなど、共感できる要素がふんだんに盛り込まれています。作者のバイクに関する引き出しが豊富で、それが小熊の日常にリンクしてるところが、この作品の身上だと思います」と、その魅力について話している。

バイクの“小ネタ”も満載
小説・第5巻カバー

執筆の動機は「バイクのある物語を想像するのが楽しい」

小説に次いで、『スーパーカブ』のコミック版は、2018年5月に発行され、現在第4巻まで発売されている。また今年5月に、TVアニメ版のPR動画がYouTubeで公開されると、1カ月で70万回もの再生を数え、作品の認知度はどんどん拡大している。
作者のトネ・コーケンさんにとって、『スーパーカブ』はまさに会心のデビュー作になった。執筆の動機について尋ねると、「バイクに関するいろいろな楽しみ方があるなかで、バイクのある物語を想像し、創作を楽しむ人間がここにいるということを伝えたかった」という。「あるときは、こんな人がバイクに乗っていたらいいなとか、バイクであんな出来事が起きたらいいなと思った話を書き、あるときは自分の身に起きたことをそのまま書き、そしてあるときは、バイク乗りとしてなりたかった自分自身を書く。ずっと昔に、自分が乗るバイクを夢見ていたころからそうしていて、これからもそうです」と、書くことへの思いを述べている。
 トネさん自身、実際にスーパーカブを所有しており、「通勤や所用の交通手段として非常に便利でありながら、つい行き帰りに当てもなく走り回ってしまう、カブはそんな存在」と、愛車について評している。

小熊には“カブ仲間”もできた
コミック第4巻カバー

現実の高校生にもスーパーカブの魅力を伝えたい

本田技研工業株式会社では、『スーパーカブ』の書籍化に当たって、製品名をタイトルに使うことを許諾しており、その対応をしたのが二輪広報の高山正之さんだ。

高山さんは、1994年から同社の広報を担当し、スーパーカブの歴史に関しては社内のオーソリティでもある。小説『スーパーカブ』の感想について尋ねた。
「自分が初めてバイクに乗ったときの、楽しさとハラハラ感が共存しているような感覚を思い出しました。バイクで自立していく主人公をついつい応援するような気持ちで読みました」と話す。 創業者である本田宗一郎さんが世に出したスーパーカブは、基本コンセプトとデザインを変えることなく、世界中の人たちから愛され続けている。昭和の経済成長とともに、郵便や新聞の配達、デリバリーなどで使われ、ビジネス車としてのイメージが長く続いた。
高山さんは、「1997年にリトルカブが発売されてから、スーパーカブシリーズは実用車というだけでなく、レジャーの乗り物としても楽しめるという考えが出てきて、いまではそのイメージもかなり浸透しています。趣味でカブを楽しむファンイベントはたいへん盛況ですし、最近では若い人や女性の方々からも支持されるようになりました。スクーターと違って、カブの場合、ギアチェンジやフットブレーキなど、少しモーターサイクルに近い操作が求めらるので、走っていて楽しく感じられます。高校生のなかでバイクに乗る人はまだまだ限られていますが、交通社会への入口としてスーパーカブに触れていただければ、いままで知らなかった世界を覗くことができると思います。小説に描かれたのと同じように、バイクという乗り物は、若い人たちの自立心と責任感を養ってくれる良き“相棒”だと思います」と、話している。
ホンダのスーパーカブシリーズは、2017年10月に世界生産の累計が1億台を達成し、2018年には誕生60周年を迎えた。ホンダが世界に誇る名車中の名車である。

●問い合わせ先
株式会社 KADOKAWA カスタマーサポート
TEL:0570-002-301
URL:www.kadokawa.co.jp/

本田技研工業株式会社 広報部 企業広報課
TEL:03-5412-1512
URL:www.honda.co.jp/motor/

国内モータースポーツ競技会の開催について(日程変更情報)

一般財団法人日本モーターサイクルスポーツ協会の主な全日本選手権レース・競技会の日程が以下のように発表されている(2020年6月19日現在)。新型コロナウイルス感染症の拡大状況によっては、さらに変更される可能性がある。

全日本ロードレース選手権シリーズ
全日本モトクロス選手権シリーズ
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●問い合わせ先
(一財)日本モーターサイクルスポーツ協会(MFJ)
TEL:03-5565-0900
URL:www.mfj.or.jp/

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