「スーパーカブ」と女子高生の物語 異色のラノベが大好評ヒット!
小説『スーパーカブ』が多くの人に読まれ、好評を得ている。主人公は、山梨の高校に通う平凡な女子生徒。通学用に手に入れたスーパーカブを通じて、新しい出来事を経験し、人と出会い、成長していく青春物語だ。作品を読んだホンダの広報担当者は、「バイクに初めて乗ったときの“楽しさとハラハラ感”を思い出させてくれた。主人公を応援したくなる作品」と、話している。
女子高生とスーパーカブを描いた『スーパーカブ』(角川スニーカー文庫/1~6巻・続刊)というライトノベルが、面白いと評判だ。2017年5月に第1巻が発行されると、反響が大きかったことからコミック版も出版され、現在、TVアニメ化に向けて製作が進んでいる。どこまで大きなヒットになるか楽しみな作品だ。
主人公は、山梨県北杜市の公立高校に通う女子生徒で、名前は「小熊」。両親がおらず、頼れる親戚もなく、友達もいない。趣味もなければ、将来の夢もない、内向的な女の子だ。そんな小熊が、通学のために手に入れたのが、ホンダのスーパーカブ。何もなかった小熊に、バイクのある生活が始まった――。今回は、この作品の魅力にフォーカスを当ててみたい。
ライトノベルのなかでも異色の作品
かつて中高生向けに企画されたライトノベル。いつしか“ラノベ”と略して呼ばれるようになり、学園コメディ、ラブコメディ、SF、異世界ファンタジーなどの人気ジャンルを確立。登場人物はアニメチックなイラストによってビジュアル化されている。これがいまの一般的なラノベのスタイルで、レーベル(発行元)ごとにマニアな大人のファンも大勢いる。大ヒット作品ともなれば、世界中で何百万部と読まれるという。
『スーパーカブ』の編集を担当している兄部萌柚子さんは、次のように話す。「スニーカー文庫の作品のほとんどが男性の視点で書かれているなかで、主人公を女子高生にして、バイクとの出合いを描いていくという着想がユニークです。普通の日常が淡々と展開されるところや、登場人物のビジュアルにしても、ごく平凡な女の子に描かれているところなど、ラノベのなかではかなり異色な作品になっています。そもそも“スーパーカブ”という固有の製品名がタイトルになっているのは、当社では前例のないことです。もちろんこのタイトルでないと作品が成り立たないし、読者を引きつける大きな力にもなっていると思います」
書店のなかには、ライトノベルの書棚だけでなく、二輪専門誌のコーナーにもこの書籍を置くところがあり、バイク好きの人たちにも、ファンが増えているという。
バイクに乗ることで成長していく女子高生
小説の冒頭で、奨学金制度を使ってかろうじて高校に在籍できている小熊が、さほどの蓄えもないのにスーパーカブを手に入れるシーンは印象的だ。
学校までの道のりは山坂のため、自転車通学の小熊には原付の生徒が少しうらやましい。バイク販売店に立ち寄って商品を眺めるが、値札に驚いてため息をつく。その様子を見ていた老店主が店の奥から出してきたのは、埃まみれのスーパーカブだった。戸惑う小熊だが、なんと店主が提示した値段は、“1万円”。それならばとシートに跨ってみると、小熊の頬にフワッと初夏の風が吹き抜けた。トキメキを感じて「これ、買います」と、言葉が口をついて出た――というものだ。
と、納得できる展開だ。しかも「キャンペーン中だから」と、新品のヘルメットとグローブが小熊にプレゼントされるくだりでは、店主の心意気に拍手を送った読者も多かったに違いない。
このように、女子高生が衝動的にバイクを購入し、追って原付免許を取得、初めて公道を走り、徐々に運転に慣れ、学校にバイクで通うようになる。その流れのなかで、小熊にとって初めての出来事が次々と巻き起こり、それを経験していく。同じくカブに乗る仲間ができたのも大きい。バイクのある生活を通じて小熊は成長し、自立していくという青春物語だ。
兄部さんは、「私自身はバイクに乗りませんが、いち読者として、この作品を通して知らないバイクの世界を面白く垣間見ることができ、いろいろな“気づき”を楽しんでいます。バイクに乗る読者にとっては、バイクにまつわるいろいろな話にリアリティがあって、たとえば、ガス欠しそうになったときの小熊の不安感や、オイル交換やパンク修理を自分でやろうとするシーンなど、共感できる要素がふんだんに盛り込まれています。作者のバイクに関する引き出しが豊富で、それが小熊の日常にリンクしてるところが、この作品の身上だと思います」と、その魅力について話している。
執筆の動機は「バイクのある物語を想像するのが楽しい」
小説に次いで、『スーパーカブ』のコミック版は、2018年5月に発行され、現在書籍版・カクヨム版、第4巻まで発売されている。また今年5月に、TVアニメ版のPR動画がYouTubeで公開されると、1カ月で70万回もの再生を数え、作品の認知度はどんどん拡大している。
作者のトネ・コーケンさんにとって、『スーパーカブ』はまさに会心のデビュー作になった。執筆の動機について尋ねると、「バイクに関するいろいろな楽しみ方があるなかで、バイクのある物語を想像し、創作を楽しむ人間がここにいるということを伝えたかった」という。「あるときは、こんな人がバイクに乗っていたらいいなとか、バイクであんな出来事が起きたらいいなと思った話を書き、あるときは自分の身に起きたことをそのまま書き、そしてあるときは、バイク乗りとしてなりたかった自分自身を書く。ずっと昔に、自分が乗るバイクを夢見ていたころからそうしていて、これからもそうです」と、書くことへの思いを述べている。
トネさん自身、実際にスーパーカブを所有しており、「通勤や所用の交通手段として非常に便利でありながら、つい行き帰りに当てもなく走り回ってしまう、カブはそんな存在」と、愛車について評している。
現実の高校生にもスーパーカブの魅力を伝えたい
本田技研工業株式会社では、『スーパーカブ』の書籍化に当たって、製品名をタイトルに使うことを許諾しており、その対応をしたのが二輪広報の高山正之さんだ。
高山さんは、1994年から同社の広報を担当し、スーパーカブの歴史に関しては社内のオーソリティでもある。小説『スーパーカブ』の感想について尋ねた。
「自分が初めてバイクに乗ったときの、楽しさとハラハラ感が共存しているような感覚を思い出しました。バイクで自立していく主人公をついつい応援するような気持ちで読みました」と話す。 創業者である本田宗一郎さんが世に出したスーパーカブは、基本コンセプトとデザインを変えることなく、世界中の人たちから愛され続けている。昭和の経済成長とともに、郵便や新聞の配達、デリバリーなどで使われ、ビジネス車としてのイメージが長く続いた。
高山さんは、「1997年にリトルカブが発売されてから、スーパーカブシリーズは実用車というだけでなく、レジャーの乗り物としても楽しめるという考えが出てきて、いまではそのイメージもかなり浸透しています。趣味でカブを楽しむファンイベントはたいへん盛況ですし、最近では若い人や女性の方々からも支持されるようになりました。スクーターと違って、カブの場合、ギアチェンジやフットブレーキなど、少しモーターサイクルに近い操作が求めらるので、走っていて楽しく感じられます。高校生のなかでバイクに乗る人はまだまだ限られていますが、交通社会への入口としてスーパーカブに触れていただければ、いままで知らなかった世界を覗くことができると思います。小説に描かれたのと同じように、バイクという乗り物は、若い人たちの自立心と責任感を養ってくれる良き“相棒”だと思います」と、話している。
ホンダのスーパーカブシリーズは、2017年10月に世界生産の累計が1億台を達成し、2018年には誕生60周年を迎えた。ホンダが世界に誇る名車中の名車である。
●問い合わせ先
株式会社 KADOKAWA カスタマーサポート
TEL:0570-002-301
URL:www.kadokawa.co.jp/
本田技研工業株式会社 広報部 企業広報課
TEL:03-5412-1512
URL:www.honda.co.jp/motor/
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国内モータースポーツ競技会の開催について(日程変更情報)
一般財団法人日本モーターサイクルスポーツ協会の主な全日本選手権レース・競技会の日程が以下のように発表されている(2020年6月19日現在)。新型コロナウイルス感染症の拡大状況によっては、さらに変更される可能性がある。
●問い合わせ先
(一財)日本モーターサイクルスポーツ協会(MFJ)
TEL:03-5565-0900
URL:www.mfj.or.jp/
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変容するバイク駐車場問題 ~供給バランスの難しさが課題~
二輪車の駐車場不足問題が変容してきている。自工会調査によればユーザーの不満は少し緩和されてきたが、数字上では「増えてなお不足している」状況だ。実際に都内・渋谷駅周辺でバイクの駐車を試みると、ネットで探せば問題なく駐車場が見つかった。一方、都内にはまったく駐車場が見当たらない区域も残っており、今後はそうした空白エリアへの対応が求められる。
二輪車の駐車場不足が問題になってから15年ほどになる。当初は、街なかにバイクをとめられる場所が“皆無”といった状況で、二輪車ユーザーはみな悲鳴を上げたが、行政関係者と民間事業者の努力により、近年は都市の主要駅周辺や繁華街などでも、バイク駐車場が散見されるようになってきた。
国土交通省の資料によれば、2018年度末現在、自動二輪車の駐車場箇所数は全国で2,348カ所で、約6万台のキャパがある。2006年度末に比べ9.4倍に増加した。ただ、保有台数1,000台当たりの駐車可能台数は、自動車が68台あるのに対して自動二輪車は11台(自転車駐車場での受け入れを含めると56台)となっており、水準としては少ない。「増えてなお不足している」というのが、数字上での現状といえそうだ。
ユーザーの不満は緩和されてきている――需要回復につなげたい
バイク駐車場の数について、二輪車ユーザーはどのような意識を持っているか。一般社団法人日本自動車工業会(自工会)では、この問題に関して過去さまざまな調査を行っているが、2007年度の「二輪車市場動向調査」では、東京23区において、バイクの駐車で困ったことのある二輪車ユーザーは、全体の80%を占めていた。
最近のデータでは、自工会は2020年3月に「二輪車駐車場の利用ニーズに関する調査」(以下「駐車場ニーズ調査」)を行っており、このなかに、東京都の二輪車ユーザー162人が回答した結果がある。これによると、都内のバイク駐車場の箇所数に不満を持っているユーザーは、全体の62.9%となっている。過去の結果と単純に比較することはできないが、駐車場不足に対するユーザーの不満は、少し緩和してきたようにみえる。
都市部におけるバイク駐車場の不足は、バイクに備わっている利便性を損なう大きな要因として問題視されてきた。2006~2007年当時、二輪車の駐車場が絶対的に不足しているなかで違法駐車取締りが強化され、二輪車を手放したユーザーも多かったものとみられる。今後は、駐車場がある程度充足してきたことを周知して、バイクを手放したユーザーが再び戻ってこれるように環境を整えていくことも大事だろう。
参考までに、自工会の「駐車場ニーズ調査」では、東京都の二輪車ノンユーザー(二輪免許は所持している)78人に、「欲しい場所に二輪車駐車場が整備されたら、バイクを利用したいか」を尋ねている。すると、27.0%が「二輪車の利用(購入)に関心がある」と回答し、「レンタルで利用したい」という回答も17.9%あった。合わせるとノンユーザーの44.9%が、駐車場の充足によってバイクの利用を考えるということになる。
東京都内の駐車場事情がどのように変わってきているか、代表的なスポットを訪ね、実際にバイクが駐車できるか検証してみた。
東京・渋谷区の現在――探し方ひとつでバイクの駐車は可能
試しに選んだのは、渋谷区の中心街。渋谷区は、二輪車駐車対策に積極的に取り組んできた自治体であり、『都内オートバイ駐車場 MAP(以下「駐車場MAP」)*注』に掲載されている駐車場の数は都内でも断トツのトップ。無作為に繁華街を訪れた場合でも、問題なくバイクを駐車することができるだろうか――。
今年6月某日、平日の渋谷・井の頭通りは、さほどの混雑はなかった。有名ラーメン店で食事をするという目的を設定して、店の前までバイクでやってきた。道路は一方通行の狭い街路で、見渡してもバイクがとめられそうな施設は見当たらない。一方で、クルマの駐車場はすぐ隣のビルに見つかった。やはりバイクの駐車は難しいのだろうか?
都内のバイク駐車場を探せるWebサイト「s-park」*注で検索してみると、「渋谷第七LABI渋谷屋上駐輪場」が近くにあることがわかった。ラーメン店から100mほど離れた文化村通りに、「LABI」のビルがあるようだ。駐車場の看板がないのでわかりづらかったが、よく見るとビル1階のフロアのなかに駐車場専用エレベーターがあり、バイクを屋上まで運搬する仕組みになっている。屋上に上ると、スペースは広く収容台数は56台と十分な枠があった。利用時間は全日10:00~22:00と限られるが、1時間100円という料金なので気軽に利用できる。渋谷の中心エリアに用事がある場合、便利に利用できる駐車場の一つだろう。バイクで走りながら探したのではまず目につかないため、あらかじめ検索して場所の見当をつけておくことが、スムーズな駐車場探しのコツといえそうだ。
*注:公益財団法人東京都道路整備保全公社が発行して、バイクユーザーに無料で配布している。「s-park」も同公社の運営。
現在、駅周辺が再開発中の渋谷では、新しい商業ビルが次々とオープンしている。そのうち「渋谷ヒカリエ」、「渋谷フクラス」、「渋谷ストリーム」ではバイク駐車場がしっかり整備されている。「渋谷ストリーム」の場合、料金は1時間までは無料で、それ以降、1時間100円(125cc以下は2時間100円)という低料金だ。訪れてみると、平日のためか駐車している車両は意外なほど少なく、いつでも気軽に利用できる印象だ。
実地に試した感想からいえば、もはや渋谷駅の周辺はバイクの駐車に困らないといっても過言ではない。バイクで気軽にアクセスして、食事やショッピングを大いに楽しめる街になったともいえる。
なお、「駐車場MAP」や「s-park」で見ると、主要駅である新宿駅や池袋駅の周辺にもバイク駐車場は点在しており、渋谷と同じような利便性が期待できそうだ。
一方でライダー泣かせの“駐車場ゼロエリア”
しかしながら、東京都内でバイクの駐車場不足が解消したかといえばけっしてそうではない。主要駅の周辺エリアに駐車場が増えつつある一方で、いまだにまったく駐車不可能なエリアがあって、二輪車ユーザーを困らせている。
たとえば新宿区・四ツ谷駅周辺、文京区・江戸川橋駅周辺、世田谷区・自由が丘駅周辺などは、“バイク駐車場ゼロエリア”となっており、用事があってバイクで行ってもとめる場所がない。渋谷と同様に、四ツ谷駅周辺で、バイク駐車場を探してみることにした。
まず、四ッ谷駅の周辺をバイクで周遊する。クルマの駐車場は駅のそばにいくつか見つかった。自転車は歩道上に駐車スペースが設けられている。バイク駐車場はないか見回すが、無駄に時間が過ぎていくだけだ。理想的な場所に駐車場がないことの表れか、駅からだいぶ離れた道路脇の空きスペースに、スクーターが数台、青空駐車してあった。
四ッ谷駅に戻り「s-park」で検索すると、直線距離で450mほど離れた場所に「四ツ谷・市ヶ谷バイク駐車場」を見つけることができた。走行距離を測ると、道のりでは500mを超える場所だ。しかしたどり着いてみると、駐車枠は数台分しかなく、満車である。
ちょうど駐車したばかりのライダーがいたので話を聞くと、「この辺のバイク駐車場はここだけなんです。通勤で使っていて、ここにバイクをとめて会社まで歩いて6~7分かかります。ここが埋まっていると、飯田橋までいかないと駐車できません。そうなると会社まで徒歩10分以上かかるのですが、バイク通勤自体は便利なのでやめたくないし。この近辺に、もう少し駐車場が増えてくれればありがたいのですが……」と話していた。
「駐車場ニーズ調査」によると、二輪車ユーザーが駐車場から目的地まで許容できる距離は概ね徒歩5分(400m)以内となっており、5分を超える距離を許容できる二輪車ユーザーは全体の1割(10.5%)しかいない。四ッ谷駅の400m以内にはバイク駐車場が「ゼロ」だから、今後のバイク駐車場整備に求められるのは、こうした空白エリアをなくしていくことではないだろうか。
ユーザーが求めるバイク駐車場のイメージ
自工会の「駐車場ニーズ調査」の結果からは、二輪車ユーザーがどのような場所にバイク駐車場が欲しいか、またどのようなバイク駐車場ならば利用したいか、参考になる情報を読み取ることができる。
東京都の二輪車ユーザーの場合、バイクの利用目的(複数回答)は「用事」が71.0%、「趣味/遊び」が51.9%で、ほかの都市と比べて多いという特徴がある。
このためバイク駐車場が欲しい場所(複数回答)は、「目的地のそばの道路上」が多く、全体の56.8%から求められている。次いで「趣味や遊びのスポットがあるエリア」も54.3%という結果だ。
便利だと思う二輪車駐車場(複数回答)は、「バイク専用のコインパーキング」が67.3%でトップ。「バイク専用の路上駐車場」が58.6%で2位となっている。
また、許容できる駐車料金(単回答)は、「1日500円」までを許容できる二輪車ユーザーが全体の39.5%を占めており、それ以上の金額でも許容できるユーザーを加えると、59.3%が「1日500円」を許容する。ただし、バイクの排気量によって許容金額に差があり、原付一種の場合「1日200円」までしか許容できないユーザーが43.2%と多くを占めている。 今回の取材で、東京都内のバイク駐車場の不足問題は、「絶対数が乏しい」といった当初の課題から、ある場所にはあるが、まったくない場所も残っているという、供給バランスの難しさが課題として明らかになってきた。変容するバイク駐車場問題に、適応した取り組みが今後は求められそうだ。
■「二輪車駐車場の利用ニーズに関する調査」報告書(2020年3月)
●問い合わせ先
一般社団法人日本自動車工業会(広報室)
TEL:03-5405-6179
URL:www.jama.or.jp/
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「二輪車市場動向調査」の結果を読む 新車購入者にみる変化のポイント
『2019年度 二輪車市場動向調査』の結果によると、新車(二輪車)購入者の平均年齢は54.7歳。50~60代が新車購入の中核をなしている。購入した二輪車への満足度は、すべての項目で期待度を上回り、スピード感や爽快感、渋滞にまきこまれない特性が評価された。また、二輪車駐車場の整備、任意保険料の低料金化、高速道路の低料金化などがユーザーから期待されている。
一般社団法人日本自動車工業会(自工会)は、「2019年度 二輪車市場動向調査」を実施し、今年4月8日、結果を発表した。この調査は隔年で実施しているもので、二輪車を新車で購入した人の属性や使用状況などを把握する「新車購入ユーザー調査」と、市場活性化のヒントを探る「トピック調査」との2本立てとなっている。
とくに「新車購入ユーザー調査」は、過去からおおむね同じ設問を続けており、新車購入者の特徴や使用実態の変化などを読み取ることができる。この記事では、今回の「新車購入ユーザー調査」の結果のなかから、大きな変化がみられた事柄や、注目すべき傾向をいくつか読み解きたい。
新車を購入する世代は「50~60代」がメイン
今回の2019年度調査で、二輪車を新車で購入した人の平均年齢は54.7歳で、前回の2017年度調査から2歳上昇した。(次頁グラフ参照)
世代構成率を見るとボリュームゾーンは「50代」の30%で、「60代」も26%と多い。“人生100年時代”といわれるが、いまや50~60代が元気なことに違和感はない。「70代以上」の12%を含め、二輪車の新車購入は、50代以上が全体の68%を占めている。
近年の二輪車販売は、原付一種(~50cc)が減少傾向にあるが、原付二種(51~125㏄)は横ばい、軽二輪(126㏄~250㏄)と小型二輪(251㏄~)は微増傾向にある。
それを踏まえて“排気量×タイプ別”で世代構成率を見ると、近年売れている「126~250㏄ オンロードタイプ」は、50代が30%(前回から8?増)、60代が20%(同6?増)となり、いわゆる1980年代の“バイクブーム世代”が、新車の軽二輪スポーツに回帰してきているものと推察できる。
この傾向は、製品価格の高い「401cc~ オンロードタイプ」ではより顕著で、50代が48%(前回から8?増)、60代が20%(同9?増)となった。最新の大型オンロードモデルに食指が動き、なおかつ購買力のある50代以上が、このクラスの新車市場をいっそう強力に牽引していることがわかる。
一方、新車を購入した「40代」の構成率は、今回17%(前回から3?減)。30代以下は合わせて12%(同6?減)となった。より若い世代の構成率が減っているのは、たんに“若者のバイク離れ”と断じるのは早計で、若い世代が中古車市場へシフトしている可能性など、さらに検証してみる必要がありそうだ。
軽二輪スポーツのヘビーユーザーが増加
2019年度調査にみる新車購入ユーザーの週間使用日数は、全体平均で3.7日。前回調査から0.2?減少した。これに伴って、新車購入ユーザーの月間走行距離は、今回の全体平均が239kmで、前回調査から26km減少した。(次頁グラフ参照)
これを“排気量×タイプ別”で見ると、とくに「126~250㏄ オンロードタイプ」では、週間使用日数が調査回ごとに減少しているなか、月間走行距離が300kmを超す“ヘビーユーザー”の構成比は減っておらず、ツーリングなどでの長距離走行は減っていないものと考えられる。近年の二輪車市場において、趣味性の高い軽二輪スポーツの人気が反映された変化・傾向といえそうだ。
新車への満足度は期待度より高い
「新車購入ユーザー調査」では、購入した新車に対し、事前に抱いた期待度と、使用した後の満足度について、さまざまな項目ごとに比較している。(次頁グラフ参照)
期待度が最も高い項目は「燃費がよい」で、全体の72%から期待されている。続いて「自転車に比べて楽に移動できる」69%、「身軽に動ける」63%、「維持費が安い」60%、「交通の不便さが解消できる」55%などとなっている。
こうした事前の期待に対して、使用してからの満足度との“差”に注目してみると、じつにすべての項目で満足度が上回っていた。とくに差が大きかったのは、「スピード感を楽しめる」が、期待度35%⇒満足度46%(11?プラス)でトップ。「乗っていて爽快感を味わえる」が期待度52%⇒満足度60%(8?プラス)、「交通渋滞に巻き込まれなくてすむ」が期待度48%⇒満足度56%(8?プラス)などとなっている。
一方、差が小さかったのは、「身軽に動ける」期待度63%⇒満足度64%(1?プラス)、「駐車スペースを気にしなくてよい」期待度42%⇒満足度43%(1?プラス)、「維持費が安い」期待度60%⇒満足度62%(2?プラス)などとなっていた。
期待される二輪車周辺のインフラ・制度の整備
調査はほかにも、二輪車の楽しみ方について、ツーリングやサーキット走行などレクリエーションの経験や、グローブやウエアなど関連用品の所有状況、二輪車の購入時の決め手となった要素などについて結果をまとめている(報告書を参照されたい)。
さらには、二輪車を取り巻く周辺(施設やインフラ、制度など)に関して、二輪車ユーザーが何を期待しているかも明らかにしている。その結果を見ると、「二輪専用駐車場の整備拡大」と、「任意保険料の低料金化」への期待が最も多く、全体の45%が改善を求めている。
ほかにも、「原付免許での運転可能排気量の拡大(125ccまで)」35%、「高速道路の低料金化」35%、「二輪車駐車場の低料金化」26%、「二輪車走行禁止区間の廃止」25%など、制度の見直しへの期待は大きい。
この記事では取り上げなかったが、2019年度の「トピック調査」は、①レンタルバイクなどにおける二輪車のサブスクリプション(定額)の受容性、②一般の人々のニーズに合う二輪車ベネフィットの発掘、③求められる「あるべき販売店」と実際との差、④乗り換え需要の動機把握の4つをテーマに結果をまとめている。
詳しい調査結果は、以下のウェブサイトからPDFデータを入手し確認されたい。
●問い合わせ先
一般社団法人日本自動車工業会
TEL:03-5405-6179
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国内二輪車市場1~3月は堅調 注目のスポーツバイク・2020年モデル
今年序盤(1-3月)の自動二輪車の国内販売は、前年同期比101.1%で堅調を維持。これから需要が上昇する季節になり、二輪車市場にどんな製品がラインアップされているかが気になる。2020年の超目玉モデルは、カワサキ「Ninja 1000SX」、スズキ「ジクサーSF250」、ホンダ「CBR1000RR-R FIREBLADE」、ヤマハ「YZF-R1」、購買意欲をくすぐる魅力に溢れている。
フルカウルモデルにみる多様な魅力
2020年序盤(1-3月)の国内二輪車市場の実績を見てみると、自動二輪車(原付二種・軽二輪・小型二輪)の販売台数は前年同期比101.1%で、堅調を維持している。とくに軽二輪(125㏄超~250㏄)は、前年同期比115.1%と、出足は好調だ。
これから夏にかけて、ニューモデルや人気モデルへの購買意欲がどんどん高まる時期。いまどんなバイクが市場にラインアップされ、注目すべきモデルの特徴はどのようなものか、購入のきっかけとなったり、比較検討につながる情報の拡散が求められている。
そこで今回は、カワサキ、スズキ、ホンダ、ヤマハ、それぞれの新機種にスポットを当て、各社広報担当者がイチオシする“2020年・超目玉バイク”を紹介する。図らずも、各担当者が取り上げた1台は、いずれもフルカウルタイプ*注のスポーツモデル。スタイリング、走りの性能、どう楽しめるバイクか、そして価格。同じフルカウルタイプでもそれぞれに魅力は異なり、スポーツバイクの多様性が見えてくる。
*注:車体が全体的にカウルで覆われた種類のバイク。カウルは走行時の風を整流するためにエンジンや車体を覆う部品。
Kawasaki(カワサキ)
買い得かつ満足のいく“スポーツツアラー”――Ninja 1000SX
「Ninja 1000SX」は、スーパースポーツのスタイリングをもちながら、ロングツーリングを快適に楽しむための乗車ポジション、機能・装備が絶妙なバランスで満たされている。オールラウンドな“スポーツツアラー”として、今年4月4日に新発売。幅広いシーンで走りの魅力を発揮する1台だ。
カワサキでグローバルマーケティング課に所属している赤地佑介さんは、「このバイクは、ワインディングを気軽にソロで楽しむもよし、パニアケースを装着してタンデムでの旅を楽しむもよし、1,000㏄クラスのパワーと軽快感がさまざまなライディングシーンにフィットします。メガツアラーを重いと感じるようになった中高年ライダーや、仲間と走ったりキャンプも楽しみたいという若者にも、大いに満足してもらえると思います」と話す。
初代モデルの「Ninja 1000」は、2011年に発売されて大ヒット。今回のモデルチェンジで4代目となり、名称には“スポーツツアラー”を意味するSXが付いた。従来の両側4本出しマフラーから片側1本出しマフラーに変更され、灯火類をすべてLED化するなど、スポーティなイメージをさらにアップさせている。
またNinja 1000SXには、快適な走行をサポートする先進機能が充実。まず、ETC2.0車載器、グリップヒーター、DC電源ソケットは標準装備。トラクションコントロールをはじめ、クラッチ操作なしでシフトチェンジできるクイックシフター、一定のスピードで走行できるクルーズコントロールなど数々の先進機能を搭載している。Bluetoothでスマートフォンと車両を接続すれば、ツーリングの行程や走行内容の記録もできるという。赤地さんは、「バイクに搭載される電子制御技術はどんどん進化しています。Ninja 1000SXにはそうした機能や装置が盛りだくさんに採用されていて、車両価格に照らしてみると、とてもお買い得感があるはずです」と、その魅力に自信を見せている。
Suzuki(スズキ)
若者の心をつかむエントリーモデル――ジクサーSF250
スズキは、今年3月27日から「スズキWEBモーターサイクルショー」を公開している。現実の会場に置かれたかのように同社のニューモデルや人気モデルが“展示”され、気になるバイクの画像をクリックすれば、詳しい情報や関連動画を見ることができる。
その正面ステージに置かれているのが、4月24日に新発売された「ジクサーSF250」だ。このバイクは、スズキ独自の新開発の油冷式エンジンを搭載した250㏄クラスのフルカウルスポーツで、国内では2019年の東京モーターショーで初公開されて話題を呼び、発売が待たれていたもの。
スズキの国内二輪広報を担当する木下博之さんは、「ジクサーSF250は、精悍な顔つきと、フロントカウルにボリュームを持たせたグラマラスなスタイリングデザインに高い評価をいただいています。また軽量で扱いやすい車体に、新開発油冷エンジンを搭載しています。走りは軽快で、低回転から力強く、高回転まで伸びのある加速感が気持ちよく楽しめるバイクです」と話す。
近年、250㏄クラスのスポーツバイクは、60万円以上の価格が多くなっている。そのなかでこのジクサーSF250は、メーカー希望小売価格が48万1,800円(税込)という思い切った“お手頃価格”。免許を取得したばかりの若者でも、積極的に購入を検討できる金額になっている。
木下さんは、「ジクサーSF250の開発コンセプトは、コストを抑えて、若者が乗りたくなるような、カッコいい250㏄クラスのスポーツバイクを作ろうというものでした。この価格には、バイクに乗る人をもっと増やしたいという、スズキの思いが込められています」と話す。なお、ネイキッドタイプの「ジクサー250」も同時に発表されており、6月17日に国内新発売の予定となっている。
Honda(ホンダ)
スーパースポーツはさらなる高みへ――CBR1000RR-R FIREBLADE
ホンダのスポーツバイクの最高峰として位置づけられるのが「CBR1000RR-R FIREBLADE」。スーパースポーツの極みといえるこのバイクが、今年3月20日に発表された。
開発コンセプトは「Total Control for the Track~サーキットで本領を発揮するマシン~」だ。MotoGPで培った技術を注ぎ、高出力かつコントロール性に優れた出力特性のパワーユニットと、操縦性を追求した車体パッケージングの組み合わせに、スポーツライディングをサポートする先進の電子制御技術や、エアマネジメントを追求したカウリングとウイングレットを採用するなど、MotoGPで培った技術も注ぎフルモデルチェンジを図ったCBRシリーズの最上位モデルだ。
ホンダモーターサイクルジャパンの広報担当・森口雄司さんは、「ホンダのCBRシリーズは、1992年発売の初代『CBR900RR』から“Total Control~操る喜びの最大化~”を追求してきました。その基本は、公道での走りをより楽しめるスポーツバイクという考えでしたが、今度のCBR1000RR-R FIREBLADEでは、“操る喜び”を最大限に感じられるフィールドをサーキットへ移したのです。名称にもRが1つ増えて“アールアールアール”となり、欧米で親しまれてきた愛称である“FIREBLADE”も加わりました」とのこと。(削除)あくなきスポーツ性能を求めるホンダの意気込みが伝わってくる。
デザインも非常に端正で、洗練されている。ホンダのレーシングマインドを象徴する赤、白、青をあしらったトリコロールカラーは、鮮やかでありながら落ち着いた凄みを感じる。大きな反響を得ており、発売からの出足は絶好調とのこと。電子制御サスペンションを採用するなど特別仕様の「CBR1000RR-R FIREBLADE SP」も同時発売中。
なおホンダは、3月27日からウェブサイトで「Honda バーチャル モーターサイクルショー」を公開している。
Yamaha(ヤマハ)
磨きをかけたフラッグシップ・待望の国内発売!――YZF-R1
「YZF-R1」は、世界中のライダーから絶大な人気を得ているスーパースポーツであり、ヤマハのフラッグシップだ。昨年、東京モーターショーに2020年モデルが出展され、待望の国内発売に向けていよいよカウントダウンが始まっている。
YZF-R1は、「Full control evolution of track master」をコンセプトに、みなぎる力を高次元で制御し、サーキットを制する性能を照準に開発されている。2020年モデルは、排出ガス規制のEU5に適合しながらも、出力性能を維持。低回転域でのわくわくするような鼓動感と、高回転域での突き抜けるパワー、ライダーの感性と加速感をリニアにリンクさせるクロスプレーンエンジンが最大の特徴だ。その魅力が今回さらに熟成され、ヤマハが掲げる“人機官能”の喜びが、サーキットで存分に味わえる。
ヤマハ発動機販売でマーケティングを担当している井田龍太さんは、「数年前のモデルと比べると、もはや異次元の乗り物です。IMU(慣性計測装置)と連動した各種の電子制御が進化して、トラクションコントロール、スライドコントロール、ローンチコントロール、リフトコントロールといったさまざまな機能がバイクの挙動を制御します。しかもライダーが違和感を感じないように制御が介入するため、自然な操縦フィーリングが楽しめるのです。2020年モデルでは、さらにエンジンブレーキマネジメントとブレーキコントロールの2つの新機能が加わり、これまで以上にマシンの性能を引き出すことができると思います」と話す。いまや、スポーツバイクの最上位モデルは、サーキット走行でしか、その真価を味わうことはできない。より高いスポーツ性能を追求するライダーにとって、YZF-R1は2020年、垂涎の1台だ。
現時点(4月20日)ではYZF-R1の発売日、価格などは未発表。なお、特別仕様の上位モデル「YZF-R1M」も国内発売が予定されている。